海事代理士は、税理士や行政書士と並ぶ国家資格八士業(弁護士、司法書士、行政書士、弁理士、税理士、社労士、土地家屋調査士、海事代理士)の1つです。
2020年2月時点で、全国で2152人が海事代理士として登録しています。
海事代理士だけで独立する人はほぼいなくて、仕事の幅を増やすために行政書士や司法書士が取ることが多いですね。
士業の資格を持っている人でも知らない人がいるぐらいニッチな資格ですが、書類の作成と申請手続が独占業務になっているため持っておいて損はない資格といえます。
海事代理士(かいじだいりし)は、海事代理士法に基づき他人の依頼によって、船舶登記や船舶登録、検査申請、船員に関する労務、その他海事許認可など、海事に関する行政機関への申請、届出その他の手続及びこれらの手続に関し書類の作成を代理・代行することを業とする者である。
引用:海事代理士 – Wikipedia
ナニワ金融道で海事代理士を知った人も意外といそうですね。
さて、この海事代理士という資格、青木雄二さんという漫画家の名作「ナニワ金融道」に落振県一という、なかなか強烈なキャラクターが登場し、彼が海事代理士であるということでご存知の方もおられると思います(当職がこの資格を知り、興味本位で勉強したのも彼がきっかけです)。
引用:【弁護士雑感】海事代理士という資格 – 事務所発信記事 From The Office|弁護士法人 橋下綜合法律事務所
海事代理士の難易度と合格率
受験者数は少なく毎年300人程度が受験しています。
受験者数が少ないため、ツイッターやブログなどを見てもほとんど情報はありませんが、行政書士などで民法と憲法を学んでいればアドバンテージはあります。
合格率は、筆記試験は50%前後ですが、口述試験は年度によって合格率にかなり差があるので参考になりません。難しい年に当たらないことを祈るしかなさそうです。
年度 | 筆記試験 受験者数 | 筆記試験 合格者数 | 筆記試験 合格率 | 口述試験 受験者数 | 口述試験 合格者数 | 口述試験 合格率 |
---|---|---|---|---|---|---|
2023年(令和5年) | 409人 | 228人 | 55.7% | |||
2022年(令和4年) | 361名 | 199名 | 55.1% | |||
2021年(令和3年) | 302名 | 167名 | 55.3% | 212名 | 209名 | 98.6% |
2020年(令和2年) | 288名 | 156名 | 54.2% | 199名 | 124名 | 62.3% |
2019年(令和元年) | 288名 | 156名 | 54.2% | 160名 | 97名 | 60.6% |
2018年 | 303名 | 157名 | 51.1% | 162名 | 150名 | 92.6% |
2017年 | 290名 | 142名 | 49.0% | 162名 | 159名 | 98.1% |
2016年 | 290名 | 141名 | 48.6% | 173名 | 133名 | 76.9% |
2015年 | 295名 | 151名 | 51.2% | 157名 | 134名 | 69.5% |
令和2年は、口述試験の採点ミスがあり4名が合格になっていました。
実際に出題された口述試験を見てみましょう。
令和2年12 月3日(木)口述試験 船舶職員及び小型船舶操縦者法に関する問題
問:一級小型船舶操縦士の操縦免許証の有効期間の更新について、11 月1日に更新申請を予定している場合、何日から何日までの間に登録操縦免許証更新講習の課程を修了しなければならないか。
申請予定日である11 月1日を起算点として3ヶ月を逆算した8月2日から11 月1日が正答
緊張していると頭が真っ白になりそうですし、なかなか難しそうですね。
海事代理士の資格試験について
令和3年の資格試験概要は下記の通りです。
筆記試験は20科目で、満点240点のうち6割以上の正答が合格ラインです。
もし不合格になった場合でも、筆記試験に合格すれば翌年は免除になるので、口述試験のみの試験になります。
試験日 | 筆記試験 口述試験 |
試験会場 | 筆記試験 札幌市 北海道運輸局 仙台市 東北運輸局 横浜市 関東運輸局 新潟市 北陸信越運輸局 名古屋市 中部運輸局 大阪市 近畿運輸局 神戸市 神戸運輸監理部 広島市 中国運輸局 高松市 四国運輸局 福岡市 九州運輸局 那覇市 内閣府沖縄総合事務局 口述試験 東京都 国土交通省(本省) |
受験手数料 | 6,800円 |
学歴、年齢、性別等による制限受験者制限はありません。第3条に欠格事由として海事代理士になれない条件があります。
・未成年者
引用:海事代理士法|条文|法令リード
・禁錮以上の刑に処せられた者であつて、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつてから2年を経過しないもの
・国家公務員法(昭和22年法律第120号)、国会職員法(昭和22年法律第85号)又は地方公務員法(昭和25年法律第261号)の規定により懲戒免職の処分を受け、当該処分のあつた日から2年を経過しない者
・第25条第1項の規定により登録の抹消の処分を受け、その処分の日から5年を経過しない者 五 心身の故障により海事代理士の業務を適正に行うことができない者として国土交通省令で定めるもの
海事代理士の出題範囲
筆記試験20科目
ひたすら暗記になります。憲法や民法は、行政書士を保有していれば、範囲がかぶっているので勉強時間を短縮できるメリットがあります。
口述試験4科目
口述試験は、対策らしい対策がありません。過去問を見てひたすら音読して覚えるという感じになると思います。あとは、グループ分けされたときに、そのグループの出題範囲が自分の勉強したところにあたるか?という運も多少は関係してきます。
2023年 海事代理士の勉強時間と試験勉強
海事代理士合格に必要な勉強時間は、法律初学者だと「300時間~600時間」で3ヶ月から6ヶ月が目安になります。
行政書士の資格を持っていれば、少ない勉強時間で合格可能です。
海事代理士は、筆記試験で半分は不合格になりますし、口述試験があるため簡単に見えて意外と難しい試験です。しかも司法書士の口述試験とは違って、わりと落ちる試験になっています。
海事代理士の独学勉強
通信講座がほぼないため、独学で合格している人が多いです。
使用するテキストも数が少なく、日本海事代理士会の「海事代理士合格マニュアル」と「海事六法」がメインになります。法改正もあるので必ず最新のものを購入しましょう。(海商法が2018年5月に改正され、カタカナから口語体の条文になりました)
過去問題と模範解答は国土交通省で見れますので、こちらもご参考に。
法律を検索できるe-GOVポータルも便利です。
独学で勉強するなら「テキストの1分野と六法を読む→その分野の問題を解く」感じで、テキストと過去問をひたすら回して暗記という感じになるかと思います。
海商法など馴染みがない分野が多くてとっつきにくいので、眠くても飽きないよう根性で乗り切りましょう。
海事代理士の通信講座
他の資格と違って、海事代理士の資格講座はほとんどありません。マイナーな資格ですし、受験者数も毎年300人程度と需要がないので仕方ないですね・・・。
いくつか海事代理士の試験対策をやっているところがありましたが、2022年4月に法律資格試験の老舗「伊藤塾」でも海事代理士講座が始まりました。
講師は、井内(いのうち)さんで、京都で行政書士もやっていて16年の実績がある方です。伊藤塾で行政書士講師も10年以上やっているのでベテランですね。
もともと10年前から海事代理士の講座を考えていたということで、この度開講したとのことです。正直、海事代理士の試験勉強は専門用語だらけですし、宅建や行政書士に比べて馴染みがなくてつまらないのでこういった講義は助かりますね😂
講義時間は「30時間」と短いので勉強しやすいですし、他の資格に比べたら値段も安いので気になる方はご参考下さい。
講座・カリキュラム
筆記試験・口述試験対策 インプット講義 全30時間
筆記試験対策 演習講義 全8時間
口述試験対策 演習講義 全4時間
海事代理士の仕事
独占業務があるとはいえ、実務は特別な知識が必要になりますし営業もなかなか難しいです。
漁船法、漁業法、海上運送契約、傭船契約も理解してないといけませんし、貨物やコンテナを管理する港湾運送事業者と話したときには専門用語が飛び交うので一般知識や海事代理士の知識だけでは対応が困難です。
クルーザーや釣り船などの小型船舶免許の各種申請手続きなどのスポットの仕事ならそこそこ取れそうですが、継続して取るのはなかなか難しいと思います。
ある程度、船舶や貨物の仕事をしたことがあって、コネがあったほうが仕事が取りやすいかなと。
こちらに海事代理士を開業して35年の三池治行さんの記事がありましたが、実務の難易度は高いですね・・・。
司法書士の不動産登記と同じで、船舶は資産価値が高いので登記ミスが許されない仕事ですね。ちなみに、船舶の登記は司法書士や弁護士にもできますが、船舶国籍証書取得や船舶検査などは海事代理士しかできません。
外国船も扱う場合は、書類が外国語(英語・トルコ語・アラビア語など)になるため海事代理士は英語のスキルがあったほうが動きやすそうですね。
外国籍船を日本籍船に変更する手続きや、プレジャーボート関連など、さまざまな業務を行っています。ここ数年は、2年以上かかる大型プロジェクトに関わる機会が多く、すべてが無事終わったという達成感は何物にも代えられないと語ります。
引用:三池 治行 | 海事代理士 | SEA-GOTO 〜海のシゴト ガイドブック〜 | C to Sea プロジェクト 海ココ
QA
海事代理士は儲かりますか?
海事代理士の収入は、その経験、勤務地、扱う業務の種類によって大きく異なります。海事業界は2024年現在、グローバル化や貿易量の増加により需要が高まっているため、特に国際貿易を扱う代理士は収入が高い傾向にあります。しかし、独立して開業する場合や新たに市場に参入する場合は、顧客基盤を築くまでに時間がかかることも考慮する必要があります。
海事代理士は難しいですか?
海事代理士になるためには、専門的な知識と技能が必要です。試験科目には海事法規、船舶登記法、国際私法などがあり、これらの広範囲にわたる専門分野を習得する必要があります。さらに、口述試験では実務に関連する深い理解が求められるため、法律や海事業界に関する実務経験が非常に有利になります。
海事代理士の将来性は?
海事代理士の将来性は非常に明るいと言えます。2024年の時点で、国際貿易の増加、海運業界のデジタル化推進、そして海洋法規の複雑化が見られます。これらの動向は、専門的な知識を持つ海事代理士に対する需要を高めています。さらに、海運業界の環境保護への関心の高まりは、環境法規に精通した代理士に新たなチャンスを提供しています。
海事代理士と通関士ではどちらが難しいですか?
海事代理士と通関士の試験難易度を比較するのは難しいですが、一般的に両者は異なる専門分野に焦点を当てています。海事代理士は海事法規や船舶登記など、海運業界に特化した知識が求められます。一方、通関士は関税法や貿易実務に関する知識が必要です。どちらも専門性が高く、広範な勉強が必要ですが、個人の興味や経験により難易度の感じ方は異なるでしょう。
海事代理士と行政書士ではどちらが難しいですか?
海事代理士と行政書士では、扱う法律の範囲や業務内容が大きく異なります。行政書士は一般的に幅広い法律知識が求められ、民法や行政法などの知識が必要です。海事代理士は海事業界に特化した知識が求められます。どちらの資格も高い専門性が要求されるため、難易度は個人の基礎知識や興味のある分野によって異なります。
海事代理士になるには学歴は関係ありますか?
海事代理士になるた
めに特定の学歴が必要というわけではありません。しかし、法律学、海運業界に関連する学部や専攻を卒業していると、試験準備に有利な場合があります。重要なのは、試験で求められる専門知識と技能を習得することです。
海事代理士の口述試験の合格率は?
海事代理士試験の口述試験の合格率は年によって変動しますが、一般的には筆記試験に比べて低めです。口述試験では実務知識が深く問われるため、詳細な業界知識と実務経験が重要になります。
海事代理士試験の合格率はどのくらいですか?
海事代理士試験の合格率は年度や受験者の質によって異なりますが、一般的には低い傾向にあります。これは試験の難易度が高く、広範囲にわたる専門知識が要求されるためです。
海事代理士試験の難易度は高いですか?
海事代理士試験の難易度は非常に高いとされています。試験内容は海事法規、船舶登記法、国際私法など、専門的かつ広範囲にわたります。また、実務経験が評価される口述試験もあり、高い専門性と実務知識が必要です。
海事代理士試験の試験問題はどのような内容ですか?
海事代理士試験の試験問題は、海事法規、船舶登記法、国際私法、船舶保険法など、海運業界に関連する幅広い分野をカバーしています。試験では、これらの法律の知識だけでなく、それらを実務に適用する能力も問われます。
海事代理士試験の受験資格には何が必要ですか?
海事代理士試験の受験資格には特に制限はありませんが、法律、海事業界、または関連分野の知識があることが望ましいです。受験者は、試験の幅広い範囲をカバーするために、専門的な勉強が必要になります。
海事代理士試験の筆記試験は合格率が高いですか?
海事代理士試験の筆記試験の合格率は一般的に低いです。これは試験の範囲が広く、専門性が高いためです。しかし、しっかりと準備をすれば合格は十分に可能です。
海事代理士試験の口述試験はどのようなテスト内容ですか?
海事代理士試験の口述試験では、受験者の海事法規や船舶登記法に関する深い理解度を評
価します。具体的なケーススタディや実務に関連する質問が出され、受験者はその場で適切な法律の適用や手続きについて説明する必要があります。
海事代理士試験を受験するために必要な勉強方法はありますか?
海事代理士試験の準備には、法律や海事業界に関する基礎知識を固めることが重要です。過去問題の解析、専門書籍の学習、模擬試験の受験などが有効です。また、実務経験がある場合は、その経験を活かして具体的な事例を理解することも役立ちます。
海事代理士試験の受験者数は年々増加していますか?
海事代理士試験の受験者数は、海運業界の動向や法規制の変化によって変動します。2024年のトレンドとして、国際貿易の増加や海運業界のデジタル化が進む中、専門職への関心が高まっているため、受験者数は増加傾向にあると考えられます。
海事代理士試験に合格するための講座や予備校はありますか?
はい、海事代理士試験に合格を目指すための講座や予備校が存在します。これらの講座や予備校では、専門知識の提供はもちろん、試験対策や過去問題の解説など、効率的な学習方法が提供されます。受験者はこれらのリソースを活用して、試験準備を進めることができます。