東日本大震災ではペットと一緒に避難することが周知されていなかったため、ペットと離れ離れになってしまうといった問題も多く発生しました。
非常時に冷静に考え行動することは難しいかもしれませんが、声なき愛犬の安全を管理することも命を預かる飼い主の大きな使命でもあります。避難時に限らず、愛犬が社会の一員として受け入れられるためには、普段から人に迷惑をかけないためのしつけとマナーを飼い主共に身につけておくことが何よりも大切です。
ここでは、地震や大雨による土砂災害など、災害が起きた場合に迅速かつ安全に行動できるよう愛犬災害に備えた知識をご紹介いたします。
環境省の災害時におけるペットの救護対策ガイドラインもご参考下さい
災害に備えて愛犬のために用意しておきたいもの
災害に備えて愛犬のために準備しておきたいグッズや道具をご紹介します。
食器
割れない素材で、ステンレス製や折りたためるシリコン製のものが便利です。
非難が長期化したり、水を自由に使用できない環境では食器を洗えないことが想定されます。処分できる紙皿を準備したり、食器にビニール袋かけてビニール袋のみを処分し食器を洗わなくても済むように準備しましょう。
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予備のリード
普段の散歩用とは別に予備で1本持っておく場合、一時的な係留ができるリードがあると便利です。リードは必ず愛犬の体重に合った規格のものを選び、一時的な係留する場合は、愛犬がリードを噛み切ることがないよう注意を払いましょう。
安全のために、犬の靴なども準備しておくと良いです。
ハウスになるキャリーバッグやクレート
愛犬を入れてそのまま持ち出すことができると便利ですが、愛犬を連れて歩かせて避難する場合はクレートの中に犬用の避難用品を入れておいても良いでしょう。
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ドッグフード、水、薬
生命を維持するための水と食糧は避難用品には欠かせないアイテムです。
備蓄は少なくとも5日分(できれば7日分以上が望ましい)を避難用の持ち出し袋等に入れておきましょう。夏場に関しては人も犬も暑さの厳しい環境に置かれる場合があり、飲料水に関しては少し余裕も持たせるか、熱中症の対策として経口補水液なども常備しておくと良いです。
災害発生後ヒトの救援物資が届きはじめるまで約3日といわれています。ペットフードに関してはそれよりも遅くなってしまうのが実状です。
救援物資のフードはいつも与えているフードと同じものとは限りません。健康上の理由から療法食やアレルギー対策のフードを与えている場合は多めに備えておきましょう。普段から投薬が必要な場合は、獣医師に相談のうえ、薬も忘れず備蓄しておきましょう。獣医師に処方されている薬の名前を教えてもらい記録しておきましょう。いざとなると薬の名前が思い出せないことがあります。
災害時に備えて、ペットとの同行避難について詳しく調べ、何を準備するべきか?どのような避難経路で、どこが避難場所になるのかなど、愛犬を含めた防災対策を家族で話しあっておきましょう。
愛犬のしつけや特徴の把握
いざ災害が起こった時を想定して、あらかじめ何ができるのかを考えておきましょう。
車中泊を想定しての準備
避難時、自家用車で避難できるとは限りませんが、家屋が半壊または全壊した場合の一時的な避難場所として車を利用せざるを得ない場合があります。
日頃から車は常にガソリンは満タンに近い状況に近い状況にあることと、詰め込みすぎは良くありませんが、車にも1つ非常用の備蓄を準備しておくと安心です。
多くの人が集まる場所ではたとえ屋外であっても排泄の場所や処理方法には細心の注意を払うようにこころがけましょう。排泄物を処理するためのゴミ袋やシーツは決して重い物ではないので、避難袋やキャリーバッグにあらかじめ入れておくなど常備しておきましょう。排泄物の臭いが漏れないビニール袋がありますので準備しましょう。排泄物は時間がたつと臭いが強くなります。周囲への配慮が大切です。
愛犬の特徴をしっかり把握
万が一、災害時に離れ離れになってしまった場合、行方不明の愛犬を探す際に、保護した方がわかるような写真(正面から、特徴のある部分、横から)を普段から携帯やパソコン、SNSなどのサーバー上のアルバムなどに画像を保存しておきましょう。飼い主さまと一緒にうつっている写真は飼い主さまと愛犬の関係性の特定に有効です。
そして、「顎に白い毛がある」「右上の犬歯が欠けている」「人を怖がる性格」など文章でも説明できる愛犬の特徴をしっかりと把握しておくことも大切です。
普段から鑑札や迷子札つきの首輪を装着
いつどんなときに災害が発生するかわかりません。なかでも、地震など前触れもなく起こる災害においては、愛犬もパニックを起こしてしまいます。
家の外へ飛び出してしまって離れ離れにならないように、室内飼育であっても首輪を装着し、飼い主の所有者明示ができる犬鑑札と狂犬病予防接種済票を着けておきましょう。停電などでパソコンが利用できないと場合は鑑札番号の照会ができないことがあります。愛犬の情報を書いた紙をカプセルの中に入れることができるチャームがありますので首輪につけておくとよいでしょう。このような形状のものでなくても、水に濡れたりしても文字がかすれないような物に愛犬の情報を記入し首輪につけておくことはあらゆる場面で身元確認が可能です。
もしも、首輪が脱落した場合の二重予防策としてマイクロチップを装着させることも有効です。
令和4年6月1日から、ブリーダーやペットショップ等で販売される犬や猫について、マイクロチップの装着が義務化されました。つまり、ブリーダーやペットショップ等で購入した犬や猫にはマイクロチップが装着されており、飼い主になる際には、御自身の飼い主の情報に変更する登録が必要となります。さらに、マイクロチップが装着されていない犬や猫を譲り受けた場合や、拾った犬や猫に御自身でマイクロチップを装着した場合には、飼い主の情報の登録が必要になります。
環境省_犬と猫のマイクロチップ情報登録に関するQ&A [動物の愛護と適切な管理]
犬と一緒に避難所で過ごすときに覚えておきたい事
避難先では、ペットと暮らしていない人や、苦手な人など、生活環境が異なる人たちが集まっているので文句や不満なども出やすくなります。最近では、避難所に同行避難している動物が原因のトラブルや、SNSでの批難を見ることもあるので、お互いが思いやりを持って協力し合い、気持ちよく過ごせるようにいくつかの事を心がけておきましょう。
ワクチンやノミ・ダニ予防
集団生活で、感染症や寄生虫を発生させてしまうと、二次被害が起きてしまいます。もし、十分に健康管理されていない場合は、当然のことながら入所を断られることもあるため、普段から健康管理はしっかり行いましょう。予防接種の証明書は避難時に持ち出せるように備えておきましょう。
ブラッシングとシャンプー
愛犬の体が汚れていたり、体臭が強かったり、抜け毛が舞うなど不衛生な状態は多くの人が集まる場所では大変迷惑です。他人に迷惑がかからないように、愛犬はいつも清潔で美しく身だしなみを整えておきましょう。
犬嫌い・動物アレルギーの人が居る
過去に犬に攻撃されたトラウマや、犬アレルギーなどから犬がNGな人も多くいます。
その事を理解し、犬と一緒に行動するときは、キャリーバッグかクレートに入れるか、リードを短く持ち犬をほかの人と接触させないように気をつけましょう。
給水・食事の配給には同行させない
多くの人が集まる場所には、なるべく連れて行かず、安全な場所で待たせておきましょう。
水や食事の配給を愛犬に分け与えることは飼い主の自由ですが、充分に物資が行き渡らない状況で支給された水や食べ物を愛犬に与えている光景は時には批難の対象になることもあります。災害時には、誰もが生きることに必死な状況ですので、普段から愛犬用の水と食事は災害用の避難袋に入れておきましょう。
愛犬と一緒に避難するときに備えたクレートトレーニング
同行避難とは、人とペットが危険な場所から安全な場所へと避難することです。
しかしながら、避難所の状況によっては、人と同じスペースで過ごせるとは限りません。
そんな時、普段からクレートが愛犬にとって落ち着ける安心の場所であり、クレート内では静かに過ごせることを練習しておくと、避難時の愛犬のストレスも大きく軽減できるほか、給水所や支援物資の受け取りのために、同伴できない場所へ行くしばらくの間、誰かに迷惑をかけることなく静かに待たせることもできます。
愛犬をクレートに入れることを「閉じ込めて可哀想」という飼い主さんの声をよく耳にしますが、災害時避難所など、不特定多数の人が集まる場所では犬を家庭内と同じように自由にさせることはできません。
多くの避難所で犬は外でクレート内でという指示が出たり、大型犬は避難所に入れないなどの制約が起こることがあります。自由であることは犬にとって本当に安心できるかというとそうではありません。クレート内に入ることが非常に苦手で吠えてしまう犬がいますが、退去を命じられてしまう可能性があります。
犬にぴったりのクレートは?
クレートの大きさは、愛犬が入ってお座りが出来る高さ、寝てる向きをクルリと方向転換できる幅のあるものがベストです。
広くて大きいものを選びたくなりますが、犬は古来、穴蔵で暮らす野生の生き物であり、また寝床を汚したくない綺麗好きな習性をもっているため、大きすぎるものが良いとも限りません。また、不必要に大きなものは避難時に運搬する際、不便です。
普段から愛犬の居場所として室内に設置するのであれば、IATA航空輸送基準をクリアした樹脂製で軽くて強度のあるものがオススメです。(参考:犬用のクレートのメリットと選ぶポイント。おすすめはどれ?)
震災時まず家の中に居る時の落下物から身を守ることもできますし、余震の続く数日間はクレートで過ごさせるなどして家の中でも安全を確保できます。
急な避難時に沢山の荷物を持ち出すことは難しい場合に備えて、布製で折りたたみ式の簡易的なクレートを室内とは別の車内のラゲッジスペースに置いておくなどすると緊急時、避難方法の幅が広がります。
普段の生活では、一緒に暮らす家族は、愛犬のことを良く知り、愛犬も「家」という安心できる自分の居場所の中で生活しています。
しかしながら、避難場所では、愛犬の知らない場所・知らない人に囲まれて様々な刺激に晒されてストレスを抱えてしまいます。そのようなストレスを受け、無駄吠えや分離不安を生じてしまうことがあるのです。
こうしたことから、災害時を含め、どんな時でもクレートの中に居れば不必要に干渉されず、安心できる居場所ということを愛犬が理解できると、災害時であっても多少のストレスは軽減できます。
予想できないタイミングで起こるのが震災です。いくら備えていてもいざ災害が起こると焦ります。災害時に持ち出すものは一か所にまとめ、中身のチェックは定期的に行いましょう。避難場所の確認はできているでしょうか?愛犬と一緒に避難する場合、どこの避難所が愛犬の受け入れ可能なのか確認しておきましょう。万が一受け入れが難しい場合を想定して第2、第3の候補を探しておくことは飼い主さまの責任です。
また、日ごろからクレートに入ることや、飼い主さまと離れたとしても吠え続けたりしないように訓練しておきましょう。お泊り練習で1泊2日程度のホテルを定期的に行うことも効果があるといえるでしょう。一人になっても必ず飼い主さまは迎えに来てくれるという安心感を愛犬が持ってくれることは大切な絆の形成になります。
万が一はいつ起こるかわかりません。今回の記事を参考にしていただき、準備に取り掛かりましょう。